驚いて、困って、焦って慌てて、混乱した頭のままでもがくその様を、前鬼は愉悦を滲ませながら眺めていた。
 もがけばもがくほどに絡め取られ、段々身動きが出来なくなっていく。それがさらに混乱と焦りを呼び、尚もがく。悪循環だ。
 当事者からすればたまったものではないが、見ている側からは、それは大層滑稽に映る。力を抜いて抵抗さえしなければ、抜け出せるまではいかなくとも、最低でもそれ以上苦しくなることはないだろうに、向こうはそれを解っていない。否、解っていることと実際に実行できるかは違うということだろうか。どちらにせよいい見世物だと思う。

 

(早く、落ちてこい)

 獲物はまんまと罠にかかった。
 あとは息の根が止まるのを待つだけ。

 

 

待ち伏せ