文章修行家さんに40の短文描写お題
01. 告白 02.  03. 卒業 04.  05. 学ぶ
06. 電車 07. ペット 08.  09. おとな 10. 食事
11.  12.  13. 女と女 14. 手紙 15. 信仰
16. 遊び 17. 初体験 18. 仕事 19. 化粧 20. 怒り
21. 神秘 22.  23. 彼と彼女 24. 悲しみ 25. 
26.  27. 芝居 28.  29. 感謝 30. イベント
31. やわらかさ 32. 痛み 33. 好き 34. 今昔 35. 渇き
36. 浪漫 37. 季節 38. 別れ 39.  40. 贈り物



 
00. PN→けせらせら
サイト名→パンくずのみち
一言→失敗しつつ直しつつ頑張りたいです。
 
01. 告白 「言っただろ」
「聞いてないわ」
 すまし顔の礼子とは対称的に、間崎は渋面で頭を抱えた。往生際悪く暫し唸った後、観念して顔を上げる。
 
02.  「ダウト!」
 潮が叫んだ。麻子はカードを裏返す。
「残念でした」
 舌を出した。
 顔を歪ませる潮を尻目に、真由子の手札はなくなった。
 
03. 卒業  名残惜しそうに手を振りながら、一人二人と見知った顔が減っていく。ふいに鼻の奥がツンと痛んで、麻子は慌てて上を向いた。目頭が熱い。
 
04.   霧雄はぼんやりと焚き火を見詰めた。九印に包まれて身を丸める。
(明日はどこに行こう)
 目の前がぼやけて、鼻の奥がツンと痛んだ。
 
05. 学ぶ  ガツンと殴られる。潮は痛む頭を手で押さえながら起き上がった。
「馬鹿息子」
 低く静かな声に身が竦む。初めて父が恐ろしかった。
 
06. 電車  アナウンスが聞こえて、真由子はハッと顔を上げる。慌てて辺りを見回せば、向かう予定だった駅から二つも離れてしまっていた。
 
07. ペット 「とらちゃん、ハンバーガーだよ〜!」
「うっひょ〜!」
 真由子が差し出した袋に飛びつくとらを見て、潮は呟く。
「餌付けされてんなあ」
 
08.  「そんなことないよ」
 眉を下げて苦笑する真由子に、とらは顔を歪めた。
「やめろ」
 低く唸る。
「そいつァ、てめーが逃げる時にする顔だ」
 
09. おとな  一時、唇に触れた感触を思い出し、水乃緒は顔が熱くなるのを感じた。
「……東京モンのガキはませとるのう」
 憎まれ口を叩いて誤魔化す。
 
10. 食事  そろりと気配を消して近付き、鋭い爪を振りかざす。
 ガキンッ! と槍とそれが激突し、一人と一匹は険悪な顔つきのまま笑い合った。
 
11.   もわっと埃が舞って、潮が激しく咳き込む。あまりの散らかりように、見渡しただけで気が滅入った。
 この中から、一冊の本を探すのか。
 
12.   小夜は目を開けた。見慣れた天井に、あの光景が夢だったのだと知る。
(覚めたくなかった)
 もう届かない温かさ、優しさを思って泣いた。
 
13. 女と女  鮮やかに動く綺麗な指先に、麻子は思わず見惚れた。礼子と自分の出来を見比べて嘆息し、すぐに気を取り直す。
 挑むように指を動かした。
 
14. 手紙 「お」
 珍しい人物からの便りに、潮は軽く目を見張った。丁寧に封を切る。相手の性格を思わせる筆跡と文面に、思わず頬が緩んだ。
 
15. 信仰  潮は、チャリンと賽銭箱に五円玉を投げ入れた。ガラガラと鐘を鳴らす。目を瞑って柏手を打ち、両手を擦り合わせた。
「頼むぜ〜神様〜!」
 
16. 遊び 「テメーこのとらぁ! 待ちやがれ!!」
「だーれが待つか、クソうしお!」
 ドタバタと駆け回る彼らに、真由子は笑った。
「楽しそうねえ」
 
17. 初体験  勇はあ〜あとため息を吐いた。少し前まで談笑していた相手の顔が浮かぶ。
「初恋だったのになあ」
 不思議と、悔しくも悲しくもなかった。
 
18. 仕事  とある村に妖の被害が出たという通達が入った。紫暮は頬をキリッと引き締め、袈裟を纏う。
 ふざけた文面の書置きを残して立ち上がった。
 
19. 化粧 「真由子、この色似合うんじゃない?」
 差し出されたグロスに、顔を顰めた一匹の妖が思い出される。
 真由子は微笑んでやんわりと断った。
 
20. 怒り  あまりの悔しさ、理不尽さに、麻子は歯を食いしばった。涙が浮かばぬよう、目に力を入れる。
 何を思うよりも先に、まず体が動いた。
 
21. 神秘  奇跡だわ。呟くように麻子が言った。潮は掲示板を見詰めたまま固まっている。
「よかったねえ、三人揃って合格決定!」
 真由子が笑った。
 
22.   獣の槍が目覚めた。
 それは限られた妖たちの間で、密やかに囁かれていた。森が震え、風がさざめく。
 何かが起きると、誰もが悟った。
 
23. 彼と彼女 「何ですって!?」
「何だよ!!」
 ああまた始まったと、級友たちはため息を吐いた。
「さっさとくっついちゃえばいいのに」
 揃って頷く。
 
24. 悲しみ  今も尚、槍は狂おしいまでの呪言を吐き続ける。
 血の涙を流し憎悪を滾らせる兄の変わり果てた姿に、ジェイメイはそっと目を閉じた。
 
25.   背伸びをして、杜綱は赤ん坊の柔らかそうな頬に手を伸ばす。そっと指先で突いてみると、小さな妹は声を上げてくすぐったそうに笑った。
 
26.   熱を持ち、さっきまで騒がしく動いていたものが、鎌の一振りで冷たく静かになっていく。
 その様を、霧雄はただジッと見詰めていた。
 
27. 芝居  女は満足そうに唇を歪ませた。座り込んでいる少年に手を差し伸べ、せいぜい柔らかな声をかける。
「今日から私をママと呼びなさい」
 
28.   がっしりとした体躯。高い背丈。強い力。
(女は損だ)
 日輪は丸みを帯び始めた自分の体を見下ろし、顔を顰めた。流に叩かれた肩が痛い。
 
29. 感謝 「ありがとう」
「こんなの、なんてことねーよ」
 ほんのり頬を染め微笑む麻子に、潮は頭を掻いて目を逸らした。
 少し得をした気分になる。 
 
30. イベント 「いい、皆! 今年こそ優勝目指すわよー!!」
「オーッ!!」
 麻子の勇ましい声に、皆は拳を突き上げる。鼓舞するように花火が弾けた。
 
31. やわらかさ  真由子が笑うと周りの空気がほわんとする。そうするとなんだかもうすべてが馬鹿らしく思えて、とらはため息と共にモヤモヤを吐き出した。
 
32. 痛み  皮膚が裂け、体に異物が食い込む。衝撃と激痛に意識が飛びそうになるが、それも一瞬のこと。
 獣の槍を握り締め、潮は歯を食いしばった。
 
33. 好き  いつも見ていたから、傍にいたから、視線の先も言わない気持ちも解ってしまった。
 真由子は笑う。
「お幸せに」
 この気持ちに嘘はない。
 
34. 今昔 「何してんだよとらー」
「とらちゃ〜ん!」
 顔を上げた。親しげに笑って手を振る彼らに顔を顰める。
 ふと、懐かしい誰かを見た気がした。
 
35. 渇き  英雄と称えられ畏れ敬われながらも、男の心が満たされることはなかった。優しさも温もりも知らぬまま、恨みや苛立ち、猜疑を抱き続ける。
 
36. 浪漫 「見てくれキリオくん! この色! この艶!」
「は、はあ……」
「もう一時間あのままよ」
「ああなっちゃったらお父さん、長いからねえ」
 
37. 季節 「この寒い時期にアイス食べるのが悪いんでしょ!」
「だってよー、雪見の季節だぜ?」
 青い顔で唸る潮に、麻子は呆れて暫し絶句した。
 
38. 別れ  涙が零れそうになり、紫暮は唇を噛んで堪える。
「それでは、行って参ります」
 須磨子が頭を下げると、黒く長い髪がサラリと顔を隠した。
 
39.   何物にも犯されぬ、揺るぎない強さが欲しい。凶羅はただ我武者羅に拳を振るう。
『凶羅』
 ふと誰かの優しい声が聞こえ、慌てて振り払う。
 
40. 贈り物  潮は花屋の前で立ち止まった。深呼吸を繰り返し、気合を入れて足を踏み出す。
「カーネーションくださいっ!」
 紅潮した頬で笑った。



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