00. | PN→けせらせら サイト名→パンくずのみち 一言→失敗しつつ直しつつ頑張りたいです。 |
01. 告白 | 「言っただろ」 「聞いてないわ」 すまし顔の礼子とは対称的に、間崎は渋面で頭を抱えた。往生際悪く暫し唸った後、観念して顔を上げる。 |
02. 嘘 | 「ダウト!」 潮が叫んだ。麻子はカードを裏返す。 「残念でした」 舌を出した。 顔を歪ませる潮を尻目に、真由子の手札はなくなった。 |
03. 卒業 | 名残惜しそうに手を振りながら、一人二人と見知った顔が減っていく。ふいに鼻の奥がツンと痛んで、麻子は慌てて上を向いた。目頭が熱い。 |
04. 旅 | 霧雄はぼんやりと焚き火を見詰めた。九印に包まれて身を丸める。 (明日はどこに行こう) 目の前がぼやけて、鼻の奥がツンと痛んだ。 |
05. 学ぶ | ガツンと殴られる。潮は痛む頭を手で押さえながら起き上がった。 「馬鹿息子」 低く静かな声に身が竦む。初めて父が恐ろしかった。 |
06. 電車 | アナウンスが聞こえて、真由子はハッと顔を上げる。慌てて辺りを見回せば、向かう予定だった駅から二つも離れてしまっていた。 |
07. ペット | 「とらちゃん、ハンバーガーだよ〜!」 「うっひょ〜!」 真由子が差し出した袋に飛びつくとらを見て、潮は呟く。 「餌付けされてんなあ」 |
08. 癖 | 「そんなことないよ」 眉を下げて苦笑する真由子に、とらは顔を歪めた。 「やめろ」 低く唸る。 「そいつァ、てめーが逃げる時にする顔だ」 |
09. おとな | 一時、唇に触れた感触を思い出し、水乃緒は顔が熱くなるのを感じた。 「……東京モンのガキはませとるのう」 憎まれ口を叩いて誤魔化す。 |
10. 食事 | そろりと気配を消して近付き、鋭い爪を振りかざす。 ガキンッ! と槍とそれが激突し、一人と一匹は険悪な顔つきのまま笑い合った。 |
11. 本 | もわっと埃が舞って、潮が激しく咳き込む。あまりの散らかりように、見渡しただけで気が滅入った。 この中から、一冊の本を探すのか。 |
12. 夢 | 小夜は目を開けた。見慣れた天井に、あの光景が夢だったのだと知る。 (覚めたくなかった) もう届かない温かさ、優しさを思って泣いた。 |
13. 女と女 | 鮮やかに動く綺麗な指先に、麻子は思わず見惚れた。礼子と自分の出来を見比べて嘆息し、すぐに気を取り直す。 挑むように指を動かした。 |
14. 手紙 | 「お」 珍しい人物からの便りに、潮は軽く目を見張った。丁寧に封を切る。相手の性格を思わせる筆跡と文面に、思わず頬が緩んだ。 |
15. 信仰 | 潮は、チャリンと賽銭箱に五円玉を投げ入れた。ガラガラと鐘を鳴らす。目を瞑って柏手を打ち、両手を擦り合わせた。 「頼むぜ〜神様〜!」 |
16. 遊び | 「テメーこのとらぁ! 待ちやがれ!!」 「だーれが待つか、クソうしお!」 ドタバタと駆け回る彼らに、真由子は笑った。 「楽しそうねえ」 |
17. 初体験 | 勇はあ〜あとため息を吐いた。少し前まで談笑していた相手の顔が浮かぶ。 「初恋だったのになあ」 不思議と、悔しくも悲しくもなかった。 |
18. 仕事 | とある村に妖の被害が出たという通達が入った。紫暮は頬をキリッと引き締め、袈裟を纏う。 ふざけた文面の書置きを残して立ち上がった。 |
19. 化粧 | 「真由子、この色似合うんじゃない?」 差し出されたグロスに、顔を顰めた一匹の妖が思い出される。 真由子は微笑んでやんわりと断った。 |
20. 怒り | あまりの悔しさ、理不尽さに、麻子は歯を食いしばった。涙が浮かばぬよう、目に力を入れる。 何を思うよりも先に、まず体が動いた。 |
21. 神秘 | 奇跡だわ。呟くように麻子が言った。潮は掲示板を見詰めたまま固まっている。 「よかったねえ、三人揃って合格決定!」 真由子が笑った。 |
22. 噂 | 獣の槍が目覚めた。 それは限られた妖たちの間で、密やかに囁かれていた。森が震え、風がさざめく。 何かが起きると、誰もが悟った。 |
23. 彼と彼女 | 「何ですって!?」 「何だよ!!」 ああまた始まったと、級友たちはため息を吐いた。 「さっさとくっついちゃえばいいのに」 揃って頷く。 |
24. 悲しみ | 今も尚、槍は狂おしいまでの呪言を吐き続ける。 血の涙を流し憎悪を滾らせる兄の変わり果てた姿に、ジェイメイはそっと目を閉じた。 |
25. 生 | 背伸びをして、杜綱は赤ん坊の柔らかそうな頬に手を伸ばす。そっと指先で突いてみると、小さな妹は声を上げてくすぐったそうに笑った。 |
26. 死 | 熱を持ち、さっきまで騒がしく動いていたものが、鎌の一振りで冷たく静かになっていく。 その様を、霧雄はただジッと見詰めていた。 |
27. 芝居 | 女は満足そうに唇を歪ませた。座り込んでいる少年に手を差し伸べ、せいぜい柔らかな声をかける。 「今日から私をママと呼びなさい」 |
28. 体 | がっしりとした体躯。高い背丈。強い力。 (女は損だ) 日輪は丸みを帯び始めた自分の体を見下ろし、顔を顰めた。流に叩かれた肩が痛い。 |
29. 感謝 | 「ありがとう」 「こんなの、なんてことねーよ」 ほんのり頬を染め微笑む麻子に、潮は頭を掻いて目を逸らした。 少し得をした気分になる。 |
30. イベント | 「いい、皆! 今年こそ優勝目指すわよー!!」 「オーッ!!」 麻子の勇ましい声に、皆は拳を突き上げる。鼓舞するように花火が弾けた。 |
31. やわらかさ | 真由子が笑うと周りの空気がほわんとする。そうするとなんだかもうすべてが馬鹿らしく思えて、とらはため息と共にモヤモヤを吐き出した。 |
32. 痛み | 皮膚が裂け、体に異物が食い込む。衝撃と激痛に意識が飛びそうになるが、それも一瞬のこと。 獣の槍を握り締め、潮は歯を食いしばった。 |
33. 好き | いつも見ていたから、傍にいたから、視線の先も言わない気持ちも解ってしまった。 真由子は笑う。 「お幸せに」 この気持ちに嘘はない。 |
34. 今昔 | 「何してんだよとらー」 「とらちゃ〜ん!」 顔を上げた。親しげに笑って手を振る彼らに顔を顰める。 ふと、懐かしい誰かを見た気がした。 |
35. 渇き | 英雄と称えられ畏れ敬われながらも、男の心が満たされることはなかった。優しさも温もりも知らぬまま、恨みや苛立ち、猜疑を抱き続ける。 |
36. 浪漫 | 「見てくれキリオくん! この色! この艶!」 「は、はあ……」 「もう一時間あのままよ」 「ああなっちゃったらお父さん、長いからねえ」 |
37. 季節 | 「この寒い時期にアイス食べるのが悪いんでしょ!」 「だってよー、雪見の季節だぜ?」 青い顔で唸る潮に、麻子は呆れて暫し絶句した。 |
38. 別れ | 涙が零れそうになり、紫暮は唇を噛んで堪える。 「それでは、行って参ります」 須磨子が頭を下げると、黒く長い髪がサラリと顔を隠した。 |
39. 欲 | 何物にも犯されぬ、揺るぎない強さが欲しい。凶羅はただ我武者羅に拳を振るう。 『凶羅』 ふと誰かの優しい声が聞こえ、慌てて振り払う。 |
40. 贈り物 | 潮は花屋の前で立ち止まった。深呼吸を繰り返し、気合を入れて足を踏み出す。 「カーネーションくださいっ!」 紅潮した頬で笑った。 |